スイスバウアー
2015年3月

ファンデーション東洋美術館

スイス ジュネーブにある「バウアーファンデーション東洋美術館」が収蔵している江戸時代後期の木目金の鐔(つば)の復元制作を行いました。
同美術館はスイス人収集家アルフレッド・バウアー(1865-1951)が蒐集した品々から始まり、現在ではその収蔵品の数は約9000点と東洋美術品の分野においてスイスで最も重要なコレクションとなっています。

   

木目金及びグリ彫りに分類されている作品は41点収蔵されており、今年3月に訪問しそれら全ての研究・調査を同美術館の協力のもと行いました。
復元した作品は、公益財団法人 日本美術刀剣保存協会主催の「平成27年 新作名刀展」において努力賞をいただく栄誉に預かりました。

スイスバウアー ファンデーション東洋美術館
 
 

復元研究の実際
今回復元した鐔の作者である「恒忠(つねただ)」は江戸時代後期に武州川越(現在の埼玉県川越市)にて木目金の鐔を制作していた職人です。 木材においても珍重される「玉杢(たまもく)」と呼ばれる渦のような同心円の重なりが生み出す美しい模様の作品が特徴的です。 今回の復元制作はこの「恒忠」特有の玉杢模様を忠実に再現するという挑戦でありました。試行錯誤しながら失敗を繰り返し、いくどとなく作り直し、まさにその模様の奥深さを実感することとなりました。 復元制作の工程はまず素材の金属の板の制作から始まります。調査によって解明された、銅、赤銅、上四分一(じょうしぶいち)(銀、銅、金の合金)の3種の金属の板を使用し、それを31層に積み重ね、加熱、加圧することで接合します。

木目金鐔研究課程

その金属の板を鏨(たがね)を使い、実物よりトレースした円と楕円の形に彫り下げ、金槌と圧延ローラーにて平坦に鍛造加工することで「恒忠」独特の玉杢模様になるように再現しました。

「恒忠」独特の木目金の玉杢模様の再現
 

最終的に積層は4.65㎜から0.7㎜にまで打ち延ばされますが、この間に、思うような形の玉杢模様になるよう、それぞれの彫り下げる深さや、角度、大きさを0.1㎜というような単位で微妙に調整しながらの慎重な作業が要求されます。 その結果、その一瞬一瞬を封じ込めた複雑でかつ唯一無二の玉杢模様を生むこととなるのです。

 
完成したもk目金の玉杢模様
 

< 木目金の精神性 >
制作段階における金属素材の変化を五感によって感じ取りながら、素材と対話することではじめて、その独特の紋様をあらわす木目金の技術。 素材と制作者の関係という精神性が内包された技術であると言えます。 それは木目金の指輪の制作工程においても変わりありません。 みなさまにお作りしている指輪の模様は、ご希望の模様になるように、一つ一つ丁寧に職人が素材と対話しながら日々お作りしています。

調査研究一覧へ